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私の心の限界が私の世界の限界である

Kindleですぐ読める!オススメしたい「競馬本」

きっかけはとあるムック本の発売だった。
その本は、競走馬の話をまとめて記事にしているにも関わらず、データの誤記やライターの偏見、挙げ句の果てに奥付の出版社名まで間違えていた。

競走馬の話をまとめた本としてそれはなかろうよ、アレに2300円出して読むくらいだったらもっといい本が一杯あるからそっち読もうぜ、という話です。

というわけで「こんな事を調べたい/知りたい/読みたい」ときにこんな本はいかがでしょうか。しかもKindleで販売されてるのでさくっと買って読めますよ、というのを並べていきたいと思います。

 

<まずはここから>

手に取りやすく読みやすくわかりやすい、という意味ではもう優駿とGallopの2大巨頭は外せない存在ですよ。特に今回リンクを貼った2冊は、新規の人にもわかりやすくまとめられているので一番とっつきやすい。持っておいて損はないです。
なんなら2冊合わせても例のムックより安い。

 

<馬の生態について知ろう>

まずはこれを。競走馬に求められるものはどういう資質なのか、それは肉体的にどういうところなのか、科学的にどういうところなのか・・・がわかりやすい。さすがJRA総研。基礎学習として必読です。

こちらは解説本というよりノンフィクション作品。ひょっとしたら初心者はこっちの方がわかりやすいかも。素直に「これってどういうこと?」と疑問に思うことがまとまっているので。

こちらは馬の生理学や生態学から見てのお話で、著者は獣医師さん。馬は言葉を話せない、けれども鳴き声や行動、表情で「心を伝えている」ということがよくわかる本です。

 

<馬の歴史を知ろう>

ざざーっとおさらいするならこれかな。新書1冊分で競馬の歴史(馬の歴史)がだいたいわかります。

で、先ほどの新書をもっと詳しくしたのがこれ。こっちは馬の歴史がぎしっと詰まった良書ですよ。馬の歴史ってだいたい西洋の話になりがちなのですが、きちんと東アジアと北アフリカの話も紙幅を割いている。じっくり読みたい人におすすめ。

じゃあ日本の競馬史はどうなのよという話なんですが、Kindleでうまいこと出てないんだなこれが。ぶっちゃけたところ、日本の競馬史を読むならJRAの「日本競馬史」を図書館で読むかゆっくり解説動画あたりを探るほうがいいんじゃないでしょうか。

というところで、日本史にもつながるこの本を。実は競馬と鉄道は切っても切れない縁があるんですよねえ。著者の方はテレビ東京ウイニング競馬」の実況アナウンサーが本業で、その傍らこの本を書いてJRA馬事文化賞まで受賞したという。

 

<競走馬の血統を知ろう>

本当に一から競走馬の血統を知る人向けにこの本を。血統の歴史と現代の種牡馬までを体形的に学ぶならこれが一番いいんじゃないかなと思います。

で、知った血統を競馬に生かすならここから入るとわかりやすいかな。実際競馬では「1頭の種牡馬のことを深く理解する→ほかの馬への横展開が可能になる」ので、血統の流れが明確でわかりやすくなるんですよね。数年前に亡くなりましたが、サウスヴィグラスという馬の産駒は父に似れば似るほど走っているので、この血統を押さえるだけで馬券のお世話になる…みたいなことがちょくちょくありました。

で、これだけKindleじゃないですごめんなさい。なんでかっていうと大判の紙書籍のほうが読みやすいし、なんでもないときにパラパラめくって調べられるから。
この本片手に出馬表を見るとより競馬が面白くなるし、将来産駒がデビューする馬のことも書いてある。血統を追っかけたい人は種牡馬辞典を常備するのオススメです。

 

<競走馬に関わる人の話を知ろう>

まずは「騎手の歴史」から。それこそ日本人初の馬主にして騎手・西郷従道から語られているので読み応えあるんですよ。騎手の歴史ということは、騎手の「乗り方」の歴史でもあるんだなあ。

では現代の騎手はどうなのか。というこっとで藤岡祐介騎手がいろんな騎手と対談したこの本を。「いつも怒っている」「目からビーム出てる」でおなじみ、川田将雅騎手との対談は面白いですよ。

競馬は中央だけではなく、地方にもあるわけで。
現在65歳、現役バリバリのジョッキーである「THE LEGEND」「地球が生んだ奇跡」
「くるぶしで缶コーヒーを開ける男」「実は口から生まれた疑惑」
的場文男の生きざま、ぜひ読んでください。

打って変わって、こちらは厩務員さんのお話。マンガなのでゆるく楽しく読めます。
この作者さん、園田競馬で厩務員しながらマンガを描く→園田競馬の公式HPでマンガを掲載する→ヤングアニマルで単行本化されて作家になる という、かなり特殊な経歴の持ち主でもあります。

「なんかこの調教師さん外国産馬いっぱい持ってる」でおなじみ森秀行先生の本。
今年はアメリカ最高峰のレースである「ブリーダーズカップ」に4頭の馬で挑戦という大偉業を成し遂げようとしています。サイバーエージェント藤田社長もこの調教師さんにいっぱい預けてますので、読むなら今だと思うんですよねー。

そして、2021年2月をもって勇退した角居勝彦調教師。ウマ娘でいうところの「ウオッカのトレーナー」です。現実では中央G1を26勝、角居先生のところで輝いた競走馬は数知れず。そんな人が調教師の仕事について解説してくれるだけではなく、パドックの見方や調教の見方まで書いてくれているのだから必読ものです。競走馬を引退したあとの余生についても精力的に活動されていて、その話もぜひ読んでいただきたいなあと思います。

 

<競走馬の物語を読もう>

名馬のことを一から振り返って読みたい!という人にオススメです。古い時代から今の時代まであらゆる名馬がまとまってて読みやすい。現在3巻まで出ているのでいっぱい馬の物語を読めますよ。

ウマ娘からの新規に優しい名馬列伝ならこっちかな。ただいろんな作者の回顧や馬券の話込みでの名馬列伝なので、そこはご注意を。思い出深い競馬の話には、競馬おじさんの思い出が入ってしまうのはまあご愛敬ということで・・・名レース列伝などの続編もありますので、気になるレースがある人はそちらもどうぞ。

ウマ娘に出ていなくてもなんでか知らんがみんな知っているでおなじみ、キンイロリョテイさん改めステイゴールド大先生の物語。この馬は知れば知るほど面白いのでみんな読んだ方がいいです。ステイゴールド系の種牡馬たちを知るヒントにもなりますので。

↑のような「名馬」「アイドル馬」では出てこない馬も、また名馬なのだということを教えてくれるのがこの本。いわゆる「個性派」なんてくくりで語られてるけど、どの馬にも人との繋がり、関わりがあってこその「競馬」なのだなあ・・・と思いを馳せる。

こちらはマンガ。巻数も20巻近くあるし、様々な馬と人が出てくるけど書き方や語られ方にすこーし癖があるので合わない人は合わないかも。どっちかっていうと「競馬人情物語」寄りです。

 

<馬産地の話を読もう>

日高地方がどのように馬産の歴史をたどってきたか、そもそも「馬産」ってどんな事をするんだ?という話を細かく語ってくれています。産業概論としてもオススメですし、例えば馬産地の特集動画なんかを見たときに「あのとき読んだこれのことか!」なんていう深い理解ができると思います。

血と知と地 (上)

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血と知と地 (下)

血と知と地 (下)

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日本の競馬氏を語る上では絶対に外せない、社台ファームとその創業者・吉田善哉さんの伝記です。吉田善哉という人のポリシーがどこにあって、イズムはどんなふうに脈付いたのか。吉田善哉という人のパーソナリティーの強烈さも相まって、十分な読み応えです。

 

<文学と競馬>

古いものですが、こちらがKindleで復刻されているので読んでみてはいかがでしょう。ダービーをどう書いたのか、どう見たのか、というのもまた文学。とりわけ寺山修司なんか、競馬が好きなのは知ってるけどどんな文章書いてるのかよう知らんわって人もいらっしゃるかと思いますので。

サラブレッド「ではない」血統が競馬で走っていたということをご存じでしょうか。
本作はそんな「サラ系」と呼ばれる血統を巡るミステリー小説。「サラ系」とされながらも子孫を繁栄させた名馬ミラの血が、もし「本物のサラブレッド」だとしたら・・・?という物語です。サラブレッドという血のロマンを味わいましょう。

弱小厩舎とポンコツ厩務員と女性騎手、一頭のボロボロの馬が試練を乗り越えて中央G1の「桜花賞」を目指す物語。今風だなあ~って言われるかもしれないですが、それもそのはず、年末にNHKでドラマ化されます。爽やかな物語を読みたい人にオススメ。

古いの→新しいの→ときて、また「古いの」に戻ります。この当時全国に27カ所あった地方競馬場を巡り、馬券を買う。いわゆる「旅打ち」というやつです。山口瞳作品の中では最高の「旅行記」であり、「ギャンブル心得」でもあるんじゃないかと(勝手に)思っています。

海外競馬にまつわるものでKindleで読める本なんかないかな、と考えたが、ここはやはりディック・フランシス御大を出さないといかんか・・・となったので個人的に一番好きな「興奮」を。競馬にまつわるミステリーをメインに書いている人で、自身も英国障害競馬のリーディングジョッキーであるという経歴の持ち主。

「ゲームの王国」で日本SF大賞山本周五郎賞を同時に受賞した小川哲の短編集。
本書所収の「ひとすじの光」という短編がスペシャルウィークの血統にまつわる作品です。競走馬の血統と照らし合わされる人間の血の物語もまた味わいあるものです。

とある馬主のレーシングマネージャーとしての主人公視点から、競馬界での頂点を目指す壮絶な家族史を描く物語。架空の血統や競走馬を見て「これはあの馬かな?」と考えながら読んでいくのも楽しい。蛇足ですが、作者の方も無類の競馬好きで「競馬場の達人」に出たときに1Rで単勝10万ぶっ込んで壮絶に散ったのが忘れられない。

 

<おまけ>

もう本じゃなくて歌じゃん!ってツッコミが来そうですが、SEAMOさんは一口馬主としても有名でして、昨年のNHKマイル覇者ラウダシオンなどにも出資されてます。でもって、一口馬主楽しすぎてこんな曲も書いてしまったという。
つい先日、自分も2頭ほど出資しましたので気持ちがわかるというか、これからわからされるんだろうなというか・・・

 

というわけで、長々と本の紹介(含む一曲)をしてきましたがいかがでしたでしょうか。これ面白そうだな、というのが一冊でもあって、読んでいただけたなら幸いです。