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私の心の限界が私の世界の限界である

【4thアルバム発売記念再掲】僕らの日常のための音楽―鷲崎健『「I Love You」のある世界』

本日、鷲崎健さんの4thアルバム『What a Pastaful World』が発売されました。


まずは表題曲の「What a Pastaful World~なんてスパゲティ世界~」と「奥様、お手をどうぞ」のMVが公開されておりますのでまずはこちらをどうぞ。





さてここからが本題なのですが、昔自分の持っていたブログで(現在はサーバとの契約切れのため消失)3rdアルバム『「I Love You」のある世界』のレビューを書いていたことを思い出したのでPCを掘り返してみたら発掘に成功。これもなにかの記念に、ということで当時の文章のまま再掲することにしました。ではどうぞ。

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アニメ系のラジオを聞いたり、イベント行ったりしている人にはおなじみの鷲崎健のニューアルバム、『「I Love You」のある世界』を購入した。
この人の喋りも好きなんだけど、ファーストアルバムの『Silly Walker』を聞いてその音楽もとても気に入ったので買い続けているのだけど、今回のアルバムは僕の心にとんでもなくスマッシュヒットだったので、全曲の軽い紹介をしつつ書いていく。

ファーストの『Silly Walker』はどっちかっていうとシリアス寄り、セカンドの『Singer Song Liar』はほんのちょっとだけネタ寄りなんじゃないかなという個人的見解を持っているんだけど、今回の『「I Love You」のある世界』はどっちにもバランスが取れていて、どんなときにもiPodに入れておきたいと思わせる。

曲のそれぞれをじっくり聞いてみても、キャッチーなギターリフから聞く人の耳をぴくっとさせる『ロリポップ』のポップロックから始まり、その耳を逃さずに大阪的親しみやすさを感じさせる『シャナナ』のスカのメロディから一転して雨音と雨の匂いを感じさせる『雨男』のフォークを挟み、その雨が上がって綺麗に晴れた時のように軽やかに流れる『ハッピーの誕生』の美メロ(そしてこの曲は緒方恵美に提供した楽曲のセルフカバーでもある)を経て、「君」と「僕」のリズムの違いが「二人でいると変なリズムだけど、それが気持ちいい」という歌詞をそのままヒップホップに詰めた『バラバラ ~Balance 2 Variance~』。

後半は、休日の昼間の女子が寝床でぼんやりするほのぼの系ボサノヴァ『Sleeps 午後』から、『kiss x kiss』のファンクで「お前のキスが欲しい」と平日に働くサラリーマンの男臭さを見せた後は、『Happiness』のスポークンワード・ヒップホップ。Tokyo No.1 Soul Setみたいな切なさや抒情じゃなくて、明るめでちょっとだけ裏側の黒い気持ちが漏れちゃってるのがかえってこの曲のキュートネスを引き出している。
そこから『恋はディスコ』のスウィート系ソウルで、前2曲で「君に会いたい」→「君に会えてハッピー」を経た後の、ホテルのベッドで二人夜を迎えるムーディーないい感じに高まった・・・と、思ったらその子への思いが爆発しちゃったというオチ曲(とも読める)『女の子の髪の匂いを一日中かいでたい』でいったん〆。

そしてこのアルバムを仕上げるラスト3曲は『Baby! 人生はあっちゅー間!!』→『anymore』→タイトルチューン『「I Love You」のある世界』と、三様の愛と人生の歌。『Baby! 人生はあっちゅー間!!』は、ブラスの効いた、まるでミュージカルのパーティーシーン、もしくは歌謡ショーのラスト前のように華やかで明るい、「バカでもいいから楽しく正直に行こうぜ!」的ノリの曲。ぐっとこらえた気持ちを堪えたようなアコギのイントロから、サビで涙があふれ出す名バラード『anymore』。そんな激情をぜんぶ吸収するように『「I Love You」のある世界』で僕らの等身大の世界と愛と日常を歌い締めくくる。

これだけメロディのジャンルが多岐に渡っていて、曲それぞれの性格が立っているのにもかかわらずアルバムとして成立できているのは、それはひとえに書く歌詞の世界がきちんと一本筋が通っているからなんじゃないかと思っている。
日常の世界にある、なんでもないありふれたことを日常の言葉で語り、歌い、ときどきおバカでくすっと笑える。泣ける時にはすごく泣ける。喜怒哀楽が飾らずそのまま詰まっていて、聞く人それぞれのいろんな日常で、どんなシーンであってもいろんな方向に心を揺り動かされる。そういう歌はとても好きだし、僕自身が鷲崎健の曲が好きな理由でもある。
ラジオでの鷲崎健しか知らない、歌としゃべりの上手い人というところまでしか知らないという人は本当にもったいないから、ぜひ聞いてみて欲しい。ネタ的な曲しか知らないという人も。

ちなみにネタ曲としては、前作『Singer Song Liar』で「君の事が好きで好きで100万回セ○クスしてもまだ足りない」(※検閲回避のため伏せ字)というパッションをぶつけつつ謎の感動をもたらす、タイトルもそのものずばり『1000000S○X』(※検閲回避のため伏せ字)という名曲があったのだけど、今回もそれは裏切らないで『女の子の髪の匂いを一日中かいでたい』というタイトルそのまんまの爆弾的ネタ曲でありつつ謎の感動を生む名曲が収録されてる。サビの歌詞はぜんぶ「くんかくんか」だけどな!こういうバカっぽいところも、アルバムに入るとなかなか上手い流れになっているから面白い。

そんなのも含めて、いろんな日常のいろんな時に、いろんな感情のときに、いつでも近くにいてくれる音楽。散歩の友として聞きながら歩けば、きっと幸せになって、そこにある日常を今より少しでも好きになれるはずだと思う。


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いかがでしたでしょうか。『What a Pastaful World』から「シンガー・鷲崎健」の魅力を知った人も、是非過去のアルバムを聴いて頂きたいです。ちなみに自分は「くんかくんかの歌」こと「女の子の髪の匂いを一日中かいでたい」がミラクルチューンです。
あとごめんなさい、ブロマガ検閲対策のために一部伏せ字にしました。そのまま掲載ではなかったですね。それでは。